「指定席なら座席番号があってわかりやすいんですが、自由席はどうやって中国のお客さんに伝えたらいいですか?中国の鉄道に自由席はないんですか?」と、JRに務めている友人に聞かれたことがありました。
「似たようなものとしては「立ち席」はあるけど…」と今度、自分がこの「似て非なるもの」を伝えればいいのかを悩まされた。
この文章では、チケットを項目から中国の高速鉄道を解説します。
高速鉄道のチケット

中国の鉄道は基本チケットの列車番号に指定された列車のみ乗車できます。ゆえに乗車券・経路などの情報はありません。(そもそも当日のチケットがないと駅にさえ入れません。乗り方的に飛行機と同じです。)
中でも日本と違うのが列車番号、座席情報、改札と個人情報の欄ですね。一つずつ見ていきましょう。
列車種別
中国の列車の種別は番号のイニシャルによって分かれます
イニシャル | 意味 |
---|---|
G | 中国語の高速(GaoSu)のイニシャルを取り、高速鉄道の意味。 最高時速350キロまで出すが、値段も高い。 |
D | 中国語の动车(DongChe)のイニシャルを取り、動力分散型列車の意味。 広い意味で高速鉄道ですが、最高時速250キロとなっている。 |
C | 中国語の城际(ChengJi)のイニシャルを取り、近距離都市間列車の意味。 地下鉄よりの運行形態で全席自由席なのが特徴。最高時速160キロまで出す。 |
以下は在来線 | |
Z | 中国語の直达(ZhiDa)のイニシャルを取り、在来線の最速達タイプ。 特に主要な駅にしか停車せず、最高時速160キロまで出す。 |
T | 中国語の特快(TeKuai)のイニシャルを取り、在来線の速達タイプ。 最高時速140キロまで出す。 |
K | 中国語の快速(KuaiSu)のイニシャルを取り、在来線の速達タイプではあるが、もう今の時代では誰も速いと思わない。最高時速120キロまで出す。 |
イニシャル なし | 数字のみの列車は各駅停車。 きわめて希少で、もはや中山間部が町に行くための足的な存在。 |
各駅停車に「きわめて希少」という表現をしている点に驚く方もいるかもしれませんが、運行システムについては今度紹介することにします。
座席種別
日本では在来線も新幹線も普通車、グリーン車でグレードが分かれているが、中国では高速鉄道と在来線の座席システムが大きく異なります。高速鉄道はごく一部の列車を除いて、日をまたぐ運行がないため、「座る席」が中心となります。一方、在来線は長距離な運用が非常に多いので、寝台車がついていることがほとんどです。
高速鉄道の座席
ビジネスクラス・一等席・二等席とグレードが分かれています。日本のグランクラス・グリーン車・普通車の分け方とほぼ同じですね(ネーミングは飛行機ですが)
- ビジネスクラス(中国語では「商务座」)

ゴージャスな座席で、専属のアテンダントもついています。飲み物や食事も出るし、主要駅ではラウンジサービスもあります。名前からわかる通り、飛行機のビジネスクラスのような贅沢体験ができます。
- 一等座席・二等座席(中国語では「一等座・二等座」)


一等座席と二等座席は日本で言うグリーン車と普通車です。一等車両の座席がちょっと豪華で、2ⅹ2の配列でゆとりもあります。二等座席は最も一般的な2x3配列で、初期の一部車種を除きコンセントもついています。設備面では不足を感じませんが、人が多く騒々しいのが最大の難点ですね。(スピーカーで動画流す人がかなりいるため、隣席ガチャです)
- 席なし・立ち席(中国語では「无座」)
冒頭の話では「自由席と似て非なるもの」の話をしましたが、この「座席なし」チケットのことです。中国ではこれを「站票(ZhanPiao、立ち席の意味)」と呼びます。在来線の時代から公式で発売されている立派な種別です。
基本立つことになるが、二等座席に空席がある場合はそこを一時的に使うことができます。中国では1000キロ以上の長距離運用が非常に多いため、長距離運用で座席が一部区間で空席になった場合、立ってる人はそこで休んでもいいよの意味合いで使われます。次の駅でそこのチケットを持っている人が乗ってきたらゆずる必要があります。値段は二等座席と同じのため、満員の時の救済措置の意味合いが強いですね。日本の自由席と違って定員までしか発売されないので、春節などの繁忙期では普通に売り切れます。
在来線の座席
中国の在来線は3000キロ以上の路線もざらにあるため、数日に及ぶ運転を想定し寝台車がメインになります。高速鉄道と違って普通車から紹介します。
- 「座」席(中国語では「硬座」)

名前の通り、硬い座席です。立ち席の人はこちらの席の空く隙間を狙って座ります。
- 寝台席(中国語では「硬卧」)

名前は硬い寝台のことを意味し、上中下の三段ベッドで構成されます。6人で一つのテーブルと窓をシェアするので、おしゃべりが自然に生まれます。上中下の中で上のベッドが一番安い。天井にある冷房に近すぎ、車両下部の暖房に遠すぎ、出入りも不便のためです。逆にしたのベッドが一番高いのは、ベッド下の収納とテーブルと出入りのしやすさが理由です。
- 一等寝台(中国語では「软卧」)


一等寝台は普通の寝台に比べプライバシーが大きく強化されたものの、4人一部屋なので知らない人と相部屋することが避けられない。
個人情報欄
中国の鉄道チケットは転売防止のため、2012年から実名での購入が導入されました。身分証明書の番号(日本で言うマイナンバー、パスポートも可)をチケット購入時に登録することによって、一人による複数チケットのチケット購入を防止する狙いです。現在は身分証明書をかざす、もしくはアプリのQRコードで乗車できるため、チケットのでばんがほとんどなくなりました。
終わりに
いかがでしょうか。この文章ではチケットに乗せている情報から、中国の鉄道システムを解説してみました。次回は「乗車券はないのか」、「各駅停車が希少ってどういう意味」などもう少しマクロに、運行システムにフォーカスしたいと思います。
謝辞
記念すべきこのブログの最初の文章は、自分の興味でもある交通分野にしました。このブログが始まったきっかけは、JRに勤務している自分の友人がどのようにアジア系(特に中国)のお客さんに情報発信すればよいのかの問いかけであったので、この意味でも最初の文章として、鉄道にフォーカスを合わせたいと思います。
このブログについて
このブログは、「中国のお客さまにこの表現は伝わるのか?」「なぜ中国の人々はこうした行動をとるのか?」といった疑問を解き明かしながら、文化や社会の仕組みを紐解き、相互理解を深めることを目的としています。
日中の違いに焦点を当てるだけでなく、その背後にある背景や価値観にも迫っていきます。また、時には私自身のコメントやツッコミを交えながら、読みやすく、楽しくお届けできればと思っています。
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